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終わらない僕らの歌 -「Tokyo 7th シスターズ」EPISODEシリーズ完結に寄せて-

はじめに

2021年3月31日。今日は、Project-7th総監督の茂木伸太郎*1さんがプロジェクトを卒業する日です。そして、ナナシスのサントラCD『t7s ORIGINAL SOUNDTRACK 4.0 -The Things She Always Loves-』(以下、「OST4.0」)のリリース日でもあります。
2014年2月19日にリリースされたアプリゲーム「Tokyo 7th シスターズ*2のメインストーリーであるEPISODEシリーズが2020年12月29日に完結を迎えました。その劇伴音楽を収録したOST4.0には、総監督の茂木伸太郎さんと作曲家の岡ナオキ*3さんの対談が掲載された別冊ブックレットが封入されています。近年は早めに予約するとリリースの前日にはCDが届くので、私もその恩恵に与り、昨日3月30日に対談を読みました。
対談の内容としては、ふたりのおじさんが他愛のない話をしたり、作品を作った仲間として想い出を振り返ったり、人類社会の未来の話をしたり、様々なのだけれど、特に印象に残ったのは、茂木さんが「二度とこういう作り方はしたくない」「魂を込めるだけじゃなくて、一緒に遊ぶ、笑い合うってことをちゃんとやらないと駄目だなっていうのが、今の実感なんです」と素直な心境を吐露していたことでした。
これは思い上がりかもしれないけれど、"こういう作り方"(作品に魂を込める作り方)をするように仕向けた*4ファンの一人としては申し訳なさを感じながら読んだ箇所でした。

だけど、ファンの僕に出来ることは申し訳なく思うよりも、「やりきった」と思えるまで*5魂を込めてくれた作品と、そのスタッフに対して、最大級の感謝を送ることだろうと考えました。

僕にとってのナナシス

僕にとってナナシスとは何だったか。ナナシスとは生き方の証明でした。「僕らは青空になる」という証明でした。
どんなに馬鹿にされても、落ち込んでも、立ち上がって前へ進み続けることが未来を創る。
一人ではできなくても、一人一人の一歩が共鳴あるいは連鎖することで世界は変えられるかもしれない。
世界や社会は敵でも味方でもなく、友を見つけて変えていく、創造していくものである。
そのための第一歩の尊さ。己と向き合い、自分が信じる方向へ一歩踏み出すことの大切さを示してくれた作品でした。伝えてくれた、や、教えてくれた、ではなく、それを証明してくれたのがナナシスでした。
ナナシスは、作品の内容だけでなく、態度や歩みでそれを証明してきました。
「魂を込める作り方」(=自分に嘘をつかない作り方)を実践することによって、作品内部で語られる「自分に嘘をつかない生き方」を制作態度によっても証明し、テーマに掲げる通り「誰かの背中を押して」きました。

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Tokyo 7th シスターズ初アニメーションMV短篇作品 「t7s Longing for summer Again And Again~ハルカゼ~」ビジュアル*6
さらに、そのいばらの道に挑戦し続ける中で、徐々にパートナーに恵まれ、作品性を最大限に尊重したライブイベントの実施、2015年のメジャーデビュー、ノベライズ等のメディアミックス展開、2017年の短篇アニメーションMV制作、そして2021年には長編アニメ化も果たし、「ひとりじゃない」ことも証明しました。
ナナシスの歩んできた、不器用ともいえる道のりそのものが、信じた空に向かって自分の足で歩み続ける意味の証明でした。

「共に存る」

EPISODEシリーズ完結編の最終話を観終わったとき、不思議なことに、寂しさは湧いてきませんでした。とても暖かい気持ちだったことを今でも覚えています。
7年間も追い続けてきた作品のメインストーリーが完結する、なんて経験はこれまでなかったので、いわゆる「ロス」がとんでもない負の感情として押し寄せてくるんじゃないかと思ったりもしたのですが、そんなことは杞憂でした。
7年間を共に過ごしたからこそ、ナナシスから受け取った「魂」とでもいうべきそれが、僕の中に根付いていた。だから、ナナシスのメインストーリーが完結しても、ナナシスがなくなるわけではないと自然に考えることができました。
EP.6.0の主題歌「Across the Rainbow」の一節を借りるなら、これからもナナシスと「共に存る」と、言葉遊びでもなんでもなく、実感としてそう思えました。
幻じゃないよ本当さ
君と共に存るよ
約束じゃなく
祈りでもない
君が歩む道
夏が馨る
「Across the Rainbow」777☆SISTERS
ナナシスは幻じゃなくて、紛れもなく自分の中に根付いている。確かに「共に存る」という実感が僕の中にあります。
春日部ハル「ずっと、一人じゃなかったんです。」

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Tokyo 7th シスターズ EPISODE6.0 最終話「虹の向こうへ」より

EP.6.0最終話でライブに向かう前のハルは支配人に向かってそう言っていましたが、今ならハルのこの気持ちが分かるような気がします。

ナナシスに出会ったときからずっと、一人じゃなかった。777☆SISTERSのデビューシングルの時でさえ、ナナシスは最初からずっとそう歌ってくれていたんです。
ひとりじゃない(キミもボクも)
その一歩踏み出して
「H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!*7777☆SISTERS

そして、メジャーデビューシングルでも。ひとりぼっちだけど、ひとりぼっちだからこそ、僕らは確かに想いと手を繋ぎ、傷ついても何度だって立ち上がって青空になる、と宣言していました。

ひとりぼっち僕らの

みんなの物語

何度だって僕らは

傷ついてまた強くなる

 

笑い合った一瞬を忘れないで

祈るから 願うから 青空に

 (中略)

雲が晴れて 僕ら青空になる

「僕らは青空になる」777☆SISTERS

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Tokyo 7th シスターズ EPISODE6.0 最終話「虹の向こうへ」より 雲が晴れて青空になるシーン。

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Tokyo 7th シスターズ EPISODE6.0 最終話「虹の向こうへ」より ハルの瞳に映る青空

私たちはひとりではないし、一歩を踏み出すことには意味がある。僕がそう強く信じられるのはナナシスに出会ったおかげです。

終わらない僕らの歌になる

茂木伸太郎さんが中心となって届け続けてくれたEPISODEシリーズは完結しました。一つのお別れなのだと思います。だけど、さよならじゃない。
なぜなら、ナナシスの魂は確かに僕と「共に存る」し、僕がこれからも希望を捨てず自分自身の歩みを止めなければ、その魂は終わらない。そうやってナナシスは「終わらない僕らの歌になる」のです。
青空に舞う君の希望(ゆめ)が
終わらない僕らの歌になる
いま輝く翼開いて
どんな夜も乗り越えていく
「Across the Rainbow」777☆SISTERS

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Tokyo 7th シスターズ EPISODE6.0 最終話「虹の向こうへ」より "with you"

あとがき

この記事はナナシス7周年を祝して、そしてプロジェクトを卒業する茂木さんへの感謝を込めて始まった「時季外れ」のナナシスアドベントカレンダー2021*8の最終日の記事です自分にとってのナナシスとは何だったかを端的に表現するべく作品展開とメインストーリーに主眼を置いたため、作品の詳細な歩みや777☆SISTERS以外の人物については今回割愛しました。他の担当者の皆さんが触れてくださっている部分もありますので、ぜひ他の投稿も読んでいただけるとうれしいです。

ナナシスが7周年を迎える7日前の2021年2月12日に発表された総監督のプロジェクト卒業には少なからず驚きましたが、同時に納得感も大きかったです。「Across the Rainbow」のフルバージョンを聴いたときに予感した別れが、具体的な形になったと感じました。茂木さん、8年間本当にお疲れ様でした。ありがとうございました。

これからもナナシスは続いていくということで、8年目のナナシスにも大いに期待したいと思います。

これまでナナシスに関わったすべての方に最大級の感謝を。そして、今回急な募集にも関わらず企画に参加してくれた7名の有志の皆さん、本当にありがとうございました。

*1:1982年3月19日生まれ。東京都出身。株式会社Donuts所属のクリエイター。「Tokyo 7th シスターズ」企画・原作・総監督・総合音楽プロデューサーとして作品の細部まで担当する。同役職にてゲームやライブにおいて、脚本家、演出家、作詞家、作曲家としての活動も兼ねる。(ここまでのプロフィールはOST4.0ブックレットより)

2021年3月31日付で株式会社Donutsを退社。Project-7thからも卒業。

http://t7s.jp/news/2021/02/1748/

*2:

t7s.jp

*3:1978年8月28日生まれ。福岡県出身。株式会社Numéro.8代表取締役。作編曲家として多岐にわたるサウンドクリエイトに参加。

音楽プロデュース会社設立と同時に「Tokyo 7th シスターズ」の音楽制作、ライブにおけるバンドプロデューサーを担当。(プロフィールはOST4.0ブックレットより)

*4:ライブイベントの度に制作姿勢への共感や応援の気持ちを込めた手紙を書いたりしました

*5:「Tokyo 7th シスターズ」を応援してくださっている皆さまへ

*6:https://twitter.com/t7s_staff/status/832892442382725121?s=20

*7:12文字をハイフンで繋いで、メンバー12人で手を繋いでいることを表現しているのが好きです

*8:

祝7周年! ナナシスアドベントカレンダー2021(時季外れな) - Togetter